避けて通れない相続について

ちょこっとコーヒーブレイク

 最近、父方の叔母が亡くなりました。

 90歳まで生きたのだから、長生きした部類に入るのではないかと思いますが、人生100年時代と言われると、死ぬにはまだ若い気がします。

 叔母は楽しく生きただろうか。故人を弔い、悼んでいましたが、数日もたたない間に相続財産問題が勃発。

相続問題は早いうちに打て!

 人が亡くなれば、相続は、避けて通れいない話です。

 なのに、面倒だからと、それを先延ばしにしていると、よけいに面倒な問題になるという典型例です。

 祖父が亡くなって、その相続財産について、祖父の子、叔母の代で解決せず先送りにしたばっかりに、叔母の子の代まで問題を持ち越す結果となってしまったのですから。でももし、また、ここで解決せず先延ばし続けると、叔母の孫の代まで問題を持ち越すことになるでしょう。

 私の父は、祖父が亡くなって3か月以内に相続放棄をきちんとしていました。そのおかげで、私たち兄弟は相続問題に巻き込まれなくて済んでいます。その点は父に感謝です。

 私が公務員時代に見た事例の中には、もっとたくさんの問題を抱えているご家族がいました。

 被相続人夫婦の相続財産は不動産(土地・建物)のみ。相続を長期間先延ばしにしていた結果、相続人は、子供が7人、孫が約15名、ひ孫が約30名ほどになっていました。

 不動産という分配が難しい上に、相続人が多数存在し、中には死亡していたり、音信普通であったり、外国に住んでいたりで協議が非常に難航していました。

 被相続人の財産を死亡時点で子供7名できちんと分割していれば、ひ孫の代まで持ち越すことはなかったでしょう。

 あと、借金も相続するということに無知な人が案外多く、被相続人の借金の支払いを請求されてから慌てふためている人を数多く見ました。

 被相続人が資産持ちならともかく、借金があるなら、借金も相続してしまうので、死亡から3か月以内に相続放棄をしていないと、とんでもない借金を背負わされることになるので注意です。

 また、親が亡くなってから、すぐに相続問題に取り掛かったとしても、子供間で相続が争続になり、解決が長引くという場合も多々あります。それを避けるために、私の両親は、両親が目の黒いうちに、私たち兄弟に不動産を生前贈与しました。これは、一番早くていい解決方法かもしれません。

欲張りな人に騙されないで

 次は、私の母親側の相続の話です。

 母の父が祖父より先に死亡していたため、祖父の相続財産を母が代襲相続することになりました。その際、祖父の財産を分割したいと、疎遠な他の相続人が、突然やって来て、持参した遺産分割協議書にサインするように母に言って来たのです。

 母は、すぐに署名、押印をしようとしましたが、私が待ったをかけました。というのも、その遺産分割協議書の内容を見ると、母の持分は全くの0だったからです。

 相続財産は、田舎の宅地や農地で、母の持分は、たった10万円にも満たないと言われ、母は、署名・押印しようと思ったということでした。

 しかし、最終的には、家庭裁判所の遺産分割調停できちんと分配した結果、相続財産が都市開発地に入っていたため、1億以上の高値で売れ、母は、持分割合の約1500万円の現金を手にすることができました。

 もし、あのとき、欲張りな他の相続人の言葉に騙されて署名・押印していたら、母は1円も貰えなかったのだと思うと、怖いですね。

 相続財産で親戚をも騙すんだなあと、欲深な人間が身近にいる恐ろしさと、騙されない知恵の強さを再確認しました。

騙されなかったわけ

 遺産分割協議書にサインする前に、分割する相続財産の価値をきちんと把握することです。

 不動産ならば、固定資産評価証明書。

 固定資産評価は、公示価格の7割で算定しているらしいのですが、母の相続財産の場合、固定資産評価証明書を取って見たら、それでも高い評価がついていました。

 そして、現地も見に行ってみたのですが、周囲は建築中のマンションがいくつもあって、開発地という感じ。これは、高く売れるのではと思いました。

 さっそく、その足で不動産屋を訪ねて、相続財産全部、どれくらいの値段で売却できるかについても聞いてみました。

 聞いてびっくり!

 全部で1億円は超えていたのですから。

 母の持分が10万円にも満たないなんて、酷い騙し用です。相続分の多い母に放棄させて、自分たちの持分を多く盛る魂胆だったかもしれませんが、嘘はすぐにバレる、ですね。

財産をもらう権利は誰にでもある

 母が、持分が10万円にも満たないと言われて遺産分割協議書にサインをしようとした理由には、ある心理が働いていました。

 欲深い、欲に目が眩んでいると思われたくないという心理です。

 よく、欲に目が眩んでとか、欲深いといいますが、それは、自分の法定相続分を超えた以上の財産に欲を出した場合であって、法定相続分の範囲内であれば、全く欲深いでも、欲に眩んではいません。法律がきちんと認めています。

 それなのに、母は、「10万円をもらうのも欲深いみたいだから」と遺産分割協議書にサインしようとしていました。その心理をうまく利用され、母は、持分0の遺産分割協議書に異議を唱えることができなかったのです。

 欲深いでも、欲に目が眩んでいるのでも何でもない。私は母に、法律上認められている当然の権利だと伝えました。

 そして、「代襲相続は、お母さんのお父さんが本来貰うべきだった財産を、お母さんのお父さんが命に替えて、お母さんにくれたものなんだよ。だから、ちゃんとありがたく貰おうよ!」ということを伝えました。

 その後、母は、気持ちを入れ替え、遺産分割調停で自分の権利を主張し、持分の約1500万円を獲得できました。

 相続財産の話をすると、別に欲しくないんだけれど…… もらえるものなら貰うかな…… と結構、自分は欲深な人間ではないと言い訳じみた発言を良く耳にしますが、私だったら、「権利なのでもらいます。〇〇さん(被相続人の名)ありがとうございます」と言いたいです。

 また、そういう気持ちの方が、被相続人も喜んでいるのではなでしょうか。

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