早期退職した話(その3)

早期退職した話

仕事を辞めるために考えたこと〜天秤にかける

お金の問題

 お笑い芸人ヒロシさんの著書「働き方1.9  君も好きなことだけして生きていける」に励まされ、これからは、「自分がやりたいこと、無理のない、豊かに生きることを人生の中心に考える」という思考を軸に持とうと思うようになりました。

 その軸を基準に、早期退職するかしないか最終的に決断をするために、「早期退職したらどうなるか」という状況を想像して天秤にかけるべく、客観的な視点でシミュレーションしてみました。

 ヒロシさんも著書の中で、無理してテレビに出ていた頃、このままバラエティ番組の出演を続けるか、それとも距離をおくか選択をする際、「この無理をしなかったら最悪こうなるだろう」という状況を想像して天秤にかけ、それでも構わないと思って無理を放棄したとありました。

 無理をしないことは、テレビに出ないこと。そうすると収入は激減するから生活レベルを落とさなくてはならなくなる。テレビから消えるかもしれない。想定される最悪な状況はこの程度だろう。これくらいなら構わないと思った。

 このように天秤にかけた結果、バラエティ番組に出演するという無理を放棄したというのです。

 そこで、自分も、「辛い思いをして働くという無理」をしなかったら、最悪こうなるだろうという状況を想像してみました。

ポイント1 必要生活費の試算

 まず、定期的な収入である給与やボーナスが貰えなくなり、生活レベルを落とさなくてはならなくなる。

 辞めてから、年金をもらうまでの日々の生活がどうなるか、死活問題に関わるので、最悪な状況をシミュレーションしてみました。

 私の場合は、当時、管理職であったため、月々の給料が手取り39万円、ボーナスが夏、冬合わせて約160万円で年収約628万円、そして、定年まであと4年ですから、4年分の収入約2512万円がまず得られなくなるという大きなリスクを伴います。

 そこでまず、毎月、いくらあれば生活していけるかざっくりと電卓をたたいて計算してみました。

 借金はしないという両親の教育のおかげで、今まで借金したことはないので、借金額は0。ありがたいことに、両親から生前贈与を受けた持ち家で家賃も出ません。私は、独身で自分だけの生活なので、食費光熱費を入れて、贅沢しなければ毎月10万円あれば余ることはあれ、これだけあればゆっくり過ごしていけると算出しました。ちなみに、車は維持費がかかるので持っていません。

   早期退職時から60歳までの4年分を算出すると以下のとおりです。

   120万円(年間)×4年=480万円 意外と少ない!?

 つまり、60歳まで480万円あれば、ゆっくりと生きていけるということになります。

 思ったより必要生活費が少なく、この程度の最悪な状況は許容範囲で安心しました。

 不安だーっと頭でぐるぐる考えずに、自分の将来に必要な生活費を数字で出してみて、客観的に把握できてよかったと思いました。

ポイント2 退職金の試算

 次に、退職金の額について最悪な状況を想像しました。

 ここまで苦労して頑張ってきたのに、途中退職すると、定年でもらえる退職金が減額されるという最悪な状況です。苦労して働いてきたサラリーマンにとってはこれも重大問題です。将来設計が退職金の額にかかっているといっても過言じゃありません。

 しかし、これも、不安がらずに、いくら減額になるのかきちんと把握するべく、算出してみました。

 ネットで出ている国家公務員の退職金試算表で、ざっくり、定年まで働いて貰える金額と早期退職制度を利用してもらえる金額が算出できます。

 だいたいの差は20万円程度で、大きな差はないということがわかり、退職金額20万円程度減額されるという最悪な状況も、思ったより小さくて、ほっとしました。

 実際、退職時に退職金として受け取った額と定年まで働いていたら受け取った退職金額との差額は14万5469円でした。逆に20万円くらいと多く見積もっていたので、とても儲かった気分でした(笑)。

ポイント3 年金の試算

 3つ目として、「老後の杖」として大事な年金額が、いくらか減額されるという最悪な状況を想像しました。

 国民年金は、60歳まで支払えば支給される額は変わらないのですが、サラリーマンの特権、いわゆる2階建て年金である厚生年金は、勤めている間しか支払うことができません。退職すると、国民年金一本に切り替わるからです。だから、中途退職した場合、将来、もらえる年金額がいくらなのかということもシミュレーションしてみる必要がありました。

 国民年金は、予想金額を試算してくれる便利なツールを年金機構が出していますし、ある一定の年齢になると送られてくる「ねんきん定期便」でもわかるようになっています。

 「https://www.nenkin.go.jp/n_net/n_net/estimatedamount.html」(年金機構ホームページ)

 また、厚生年金については、中途退職した場合の厚生年金額について、国家公務員共済組合の試算制度を利用しました。

 65歳からの受給試算額は、国民年金と合計して毎月約16万円はありました。

 この額を、少ないとみるかいいくらいとみるかは、その人の生活レベルによりますが、私は10万円でゆっくり生活ができると思っていたので、この年金額なら、6万円を貯金して旅行もでき、かなりいいレベルで生活できると思いました。

 年金についても、きちんと数字で算出した最悪な状況は、許容範囲でした。

お金についてまとめ

 以上が、早期退職をするかどうかどちらか決断するために想像した最悪な状況です。

 そして、私が出した結論は

 転職する方は別ですが、とりあえず、無収入を選択した私は、年金を65歳に受給するとして、それまでは無収入なので、約9年間貯蓄を崩していくことになります。さきほど、算出した生活費月10万円で、9年間の生活費合計は、約1080万円。

  これなら、最悪、貯金をくずさずに、退職金だけで、生活できる!

  と思ったのです。

 (両親から借金をしないよう教育を受けた私は、地道に貯蓄をする癖なるものがついていて、退職時には退職金の他に、老後に必要な貯蓄額があったからいえるのかもしれません。この点は両親に感謝です。)

 自分の生活スタイル、人生設計を考えながら実際に電卓を叩いて具体的に計算すると、最悪な状況を客観的数字で把握でき、とても良かったと思いました。

 逆に、もしプラスいくらか欲しい場合は、短期アルバイトやお小遣い稼ぎにシルバーセンターの会員になってバイトでもやってみようかなと思うくらい楽しくなっていました。

最後に、天秤にかける!

 毎月の給与39万円、夏冬のボーナス約160万円を貰っていた生活と比較すれば、確かに、退職して毎月10万円の生活は、お金に換算すれば生活レベルはかなり落ちるかもしれません。でも、贅沢はキリがないし、むしろ、私にとって価値あるものは、美味しいものを食べたり、いい洋服を着たり、高級な物を買うよりも、大切な人との時間や好きなこと、楽しいことができる自分のゆとりある時間でした。

 当時、毎日8時間ずっとデスクワークで縛られて、休暇の取りにくい自由のない日々。やりたくもない仕事のノルマと苦痛な人間関係で心身ともにすり減り、このまま毎日無理してやっていくのには、もう精神的に限界に達していました。

 無理をしなかったらこうなるというシミュレーションをして算出した結果、お金に関する最悪な状況は、私にとっては、全然、最悪でも何でもありませんでした。逆に、定年まで働いて、これから好きなことをしようと思っても、気力、体力は果たして残っていいるのだろうかと想像すると、定年まで働く方が最悪な状況に思えました。定年延長の話が持ち上がったときは、恐怖におののきました。

 だから、天秤にかけた結果、無理して仕事を続けることを潔く放棄し、仕事を辞めて、好きなことをして自由に楽しく生きていく人生を選択する決心がつきました。

 「辞めても大丈夫!」と自信を持って決心がついたときの悩みのない、あの晴れやかな気持ち。とてもすっきりとして、心地いいものだったのを今でも覚えています。

 次回は、早期退職すると決心した後の話です。

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